猫の額

猫が好きな大学生のブログです。

最近読んだ本

ヘルマン ヘッセ, 松永美穂訳, 「車輪の下で」, 光文社

小学生の時に一度読んでいたが、内容をほとんど覚えていなかったため再読。真面目で頭の良い男の子が、神学校の抑圧された環境下でちょっとずつおかしくなってしまう話。「車輪の下」に轢かれるような人間にならないために神学校に行ったのに、そこで病んで「車輪の下」の人生を歩む事になるという皮肉。ハンスが真面目すぎたのと自己評価がそんなに高くなかったからなのだろう。大学生の今読むとなんとなくハンスの焦燥感が分かるような気がするが、なるほど小学生では理解できない。特に自分の子供の頃は自己評価が低い状態がなかったので尚更だろう。

ハンスの精神的に不安定になっていく様子が、同じ轍を踏みそうな予感がして変な縁を感じた。もちろんそうならないようにしたいのだが。

 

夢野久作, 「少女地獄」, 角川書店

ほんの少しの整形で美少女になった、めちゃくちゃ魅力的だが経歴がほとんど嘘である女の子が、周りの人を虚言で(犯罪ほどでもなく大事じゃない)トラブルに巻き込んでから自殺する「何んでも無い」、バス会社の女の人が男の人に殺されてその復讐をしようとする友人もその人を好きになってしまう「殺人リレー」、火星の女と呼ばれるほど醜く背の高い女の子の遺書に書かれた復讐と暴露の話の「火星の女」と他何編か。「何んでも無い」の姫草ユリ子みたいな女の人、Twitterに腐るほど湧いていそうな気がする。全体的にあんまり面白くなかった。

 

知里真志保, 「アイヌ民譚集」, 岩波書店

アイヌ神謡集を気に入ったので読んでみた。編者は神謡集を書いた知里幸恵の弟。対訳付きの説話集。アイヌにも善いお爺さんが豊かになった事に嫉妬した隣のお爺さんが善いお爺さんの真似をして豊かになろうとして失敗する、という瘤とり爺さんや花咲か爺さんのストーリーの類型がたくさんあるらしい。内容のためか神謡集のようなワクワク感が味わえなかった。民譚集自体よりも付録のえぞおばけ列伝の方が面白かった。アイヌ語学者らしく文法や語彙の用法に関する解説が豊富だった。

 

アーシュラ・K・ル=グウィン, 清水真砂子訳, 「影との戦い ゲド戦記」, 岩波書店

ジブリゲド戦記がテレビでやっていたので読むことに。ゲド(ハイタカ)が魔法使いになった経緯と顔の傷の理由がわかる。メッセージは「目を背けたいことから逃げ回っているとその影響力は強まっていくので、解決するにはさっさと向き合うしかない」ということなのだと思う。あとは「傲慢なのはよくない」か。正論。

アースシーの島々の地図がついていて芸が細かかった。気が向いたら全巻読んでみようと思う。